松田博史社会保険労務士事務所

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休憩時間について

労働基準法では、労働時間6時間を超え8時間以下の場合には、少なくとも45分8時間を超える場合には、少なくとも60分の休憩時間を労働時間の途中に与えることを使用者に義務付けています。

休憩時間というと、一般的に12~13時のお昼の休憩をイメージしますが、1日の所定労働時間が7時間30分であれば、お昼の休憩は45分でも法律上は構いません。

ただし、所定労働時間が7時間30分で、休憩が45分の場合、定時で帰る日はそれで問題ありませんが、例えば残業を1時間する場合には、労働時間が8時間30分となり8時間を超えることになりますので、追加で15分の休憩を与える必要があります。

休憩時間は1回にまとめて与えてもいいですし、分割して与えても構いません。例えば、12~12時45分と15~15時15分の1日2回で、計60分などの与え方でもOKです。

休憩の一斉付与
休憩時間は、従業員に一斉(全員一緒に)に与えることを原則としています。ただし、運送・販売・金融・保険・飲食・接客業などの業種は、一斉に与えることが難しいため、交替で休憩を与えても構わないとなっています。また、上記業種以外でも労働者代表と労使協定を締結すれば、交替で休憩を与えることができます。
労使協定には、次の事項を定める必要があります。

・一斉に休憩を与えない労働者の範囲
・当該労働者に対する休憩の与え方

労使協定は、労働基準監督署への届出は不要です。

休憩時間の自由利用
休憩時間は、自由に利用させなければならないと定められています。休憩中に電話が鳴ったら出なければならない状態は、労働から完全に解放されているとはいえないため、待機時間として法的には労働時間になります。(休憩を与えたことになならない。)

どうしてもお昼休みに電話番が必要であれば、電話番を当番制にして、当番日は休憩をずらして(例えば13~14時)とるようにして対応することになります。そうでないと、休憩時間は労働時間であるとされ、退職時や退職後に賃金請求されるリスクが高まります。電話番の頻度や勤続年数によっては、高額請求になる可能性があります。

 
2024年04月26日 13:30

雇用契約の締結により発生する権利と義務は

雇用契約(労働契約)とは、「労働者が使用者に使用されて労働を提供し、使用者が労働者に賃金を支払う。」 ことを不可欠とする契約です。
つまり、労働者には労働義務、使用者には賃金支払義務が法的義務として発生します。

雇用契約を締結すると、使用者および労働者には、前記以外にも様々な権利義務が発生します。

使用者・労働者共通

信義誠実の原則
 相手方の信頼を損なうような行動をしてはならない。

権利濫用の戒め
 権利の行使にあたっては、それを濫用してはならない。


労働者の義務

誠実労働義務(職務専念義務)
 労働者は、雇用契約の合意内容の枠内で、使用者の指揮命令に従って誠実に労働しな
 ければならない。職務に専念しなければならない。

職場(企業)秩序遵守義務
 労働者は、職場(会社)の秩序を乱さないよう行動しなければならない。

守秘義務・競業避止義務
 労働者は、業務上知り得た使用者の営業秘密や企業秘密などをその承諾なく使用・
 開示してはならない。
 使用者の事業と競合する事業を行ってはならない。


使用者の権利義務

業務命令権
 使用者が雇用契約の締結によって取得した労働者の労働力を利用・処分する権限

人事権
 労働者の配置、異動、昇進、人事考課など労働者の地位や処遇に関する決定権限

職場(企業)秩序定立権
 組織的労働の円滑な遂行のために、組織としての規律・秩序を設定し、それを維持
 
する権限

安全配慮義務
 労働者が使用者の指揮命令の下に労働を提供する過程において、労働者の生命および
 身体を危険から守るよう配慮
すべき義務

職場環境配慮義務
 労働者が職場で快適に働けるよう、職場環境を整備・保持しなければならない義務(セクハラ・パワハラなどが起こらないように)


以上の権利義務は、就業規則や雇用契約書に記載がなくても、雇用契約の締結によって付随して発生する権利義務です。就業規則等に書かれてないからといって義務を免れるものではありません。

就業規則の服務規定は、労働者の義務である誠実労働義務、職場秩序遵守義務、守秘義務・競業避止義務を具体的に記載したものと言えます。服務規定はとても大事な規定なのですが、あまり関心がないように見受けられるケースがあります。就業規則の内容は法的義務になりますので、しっかり関心を持って規定を作っていってください。

従業員数9名以下だと就業規則の作成義務はありませんが、服務に関するルールを定めた「職場のルール」を作成し、従業員の義務を明確にし明示することは秩序ある職場の維持に効果的な手段であります。最近は、自分の権利ばかり主張し、義務をきちんと果たさない労働者も増えてきています。※ネット等で権利についてすぐ調べられる時代のため

 
2023年03月31日 10:30

休日出勤や残業と所定労働時間の労働は相殺できません。(給与計算に注意)

所定労働時間が1日8時間、休日が土曜・日曜の会社で、土曜日に休日出勤し8時間労働した従業員に、翌週の月曜日に代休を与えた場合、給与計算の処理はどのように行うべきなのでしょうか。

土曜日に労働させた分、月曜日に休みを与えたので、都合トータルの労働時間は変わらないため、休日出勤に関する手当は全く不要なのでしょうか。

このケースの場合、休日出勤した週は月曜から金曜までに、すでに8時間×5日=40時間労働していて、土曜日の労働は週40時間を超えた労働になるため、割増賃金の支払いが必要になります。法律上、1日については8時間、週については40時間を超えた労働について割増賃金の支払いが必要なためです。

土曜日の休日出勤分・・・1時間あたり賃金×1.25×8時間 の支払い
月曜日の休み分・・・・・1時間あたり賃金×8時間     の控除

この2つの計算式を相殺すると結局、1時間あたり賃金×0.25×8時間分の手当の支払いが必要なことになります。

0.25分の支払いをしていない場合は、労働基準法違反になるため注意してください。

ただし、休日出勤した週に休日を与えた場合は、その週の労働時間は40時間になるため、手当の支払いは不要になります。


また、残業が長時間になったため、その時間分翌日の始業時刻を遅らせた場合(終業時刻はそのまま)も上記同様になります。

例えば、4時間分の残業代は、1時間あたり賃金×1.25×4時間になりますが、翌日4時間労働を免除した分は、1時間あたり賃金×4時間の控除になるため、0.25×4時間分の残業代の支払いが必要になります。支払いをしていない場合は、労働基準法違反になりますので注意してください。

 
2023年03月20日 11:45

入社前研修に賃金の支給は必要か

新卒採用者などに入社日前に研修を行うことがありますが、このような場合であっても、その時間が労働時間に該当する場合は、賃金の支払いが必要になります。

労働時間とは、使用者の指揮命令下にあって、労務提供のために拘束されている時間のことををいいます。
よって、入社前研修についても、使用者の支配下にあって、一定の場所に、一定の時間一定の労務提供目的のために拘束されている場合は労働時間に該当します。

より分かりやすく言うと、研修内容が業務に関連するもので、研修に参加することが業務命令として強制されていれば労働時間に該当しますし、自由参加で出席しないことについて何ら不利益がないのであれば労働時間には該当しません。

そして、労働時間に該当する場合は、賃金の支給が必要になりますが、その賃金は、最低賃金以上の金額であればいくらでも問題ありません。

支給金額としては、次のようなものが考えられます。

・入社後の給与を基準にした金額
・研修手当として全員一律の金額
・アルバイトとして時給計算

なお、研修時間が1日8時間を超える場合は、超えた時間について、通常の時間外勤務同様に割増賃金の支給が必要です。

初めから8時間を超えるカリキュラムを組むのであれば、その時間分も含めた賃金である旨を明示して支給することでも差し支えありません。


 
2023年01月12日 10:21

給与計算における欠勤控除の計算方法(長期欠勤の場合の対応方法)

給与計算における欠勤控除の計算方法には、2つの方法があります。

① 1年間を平均した1月あたりの所定労働日数を基に計算

② その月の実際の所定労働日数を基に計算

①を採用している企業が多数です。その理由としては、給与計算が楽で、欠勤控除の金額が月にかかわらず一定である、などです。

ただし、①の場合、不都合なケースも発生します。

例えば、月平均所定労働日数が20日で、実際の所定労働日数が21日の月に1日だけ出勤し、20日欠勤した場合などです。

欠勤1日につき20分の1を控除するため、20日欠勤すると20分の20控除となり、給与はゼロになってしまいます。
実際は1日出勤しているのに、ゼロはおかしいのではと思われます。

このような場合は、欠勤控除による計算方法ではなく、日割り計算(1日あたり賃金額×出勤日数)で給与を計算する方法がよいでしょう。

例えば、月10日までの欠勤は欠勤控除で計算し、月11日以上の欠勤は日割りで計算するとして使い分けると良いと思います。
10日で使い分けるのか、もっと多い日にち(15日など)にするのかは検討してください。


また、欠勤日数が多い月の通勤手当については、
給与規程などに、「月20日以上欠勤した場合は、支給しない」、「月10日欠勤した場合は、日割り計算する」などと記載していれば、減額や不支給にすることは可能です。
このような記載がなければ、全額支給する必要があります。
 
2022年11月04日 11:23

出勤停止とは(給与の支払いは必要なのか)

出勤停止(自宅待機)とは、何らかの理由により従業員の出社を会社が禁止(拒否)することです。
出勤停止には、次の2種類があります。

① 懲戒処分としての出勤停止
  従業員が就業規則に記載の違反行為を行ったときに、会社が就業規則に記載の懲戒
  処分
として、出勤停止処分とすること。
  就業規則に記載されていることが必須になります。そして、処分が正当なものであれば、
  出勤停止処分中の給与は無給で問題ありません。

② 業務命令としての出勤停止
  不正事故等の調査のために、業務命令として出勤停止(自宅待機)とすること。
  問題を起こしたと思われる従業員を出社させると、不正事故に関する証拠の隠滅の
  おそれ
があるなど、出社をさせないことに正当な理由があれば、業務命令として
  出勤停止(自宅待機)にすることは可能です。
  
  ただし、①と違い、業務命令として出社させないため、給与の支給は必要です。
  (自宅待機することが業務になるため)

  例外的に次に該当する場合は、給与は無給とすることができます。

  ・出社させないことについて、証拠隠滅や不正行為の再発などの、緊急かつ合理的な
   理由
があるとき
  ・不正行為の事実を確認し、懲戒処分として出勤停止にすることになった場合に、事実
   調査のための出勤停止期間を懲戒処分としての出勤停止期間に転化させることが、
   就業規則に定められているとき

出勤停止の期間は、法律による規制はありませんが、7日や10日と定めている会社が多いです。(長くて14日)  
 
2022年10月25日 14:45

令和4年10月から最低賃金が改定されます。

令和4年10月から最低賃金が改定されます。
当事務所のある東海地方、および東京・大阪は次のとおり改定されます。

愛知県  955円 ⇒ 986円
岐阜県  880円 ⇒ 910円
三重県  902円 ⇒ 933円

東京都 1041円 ⇒ 1072円
大阪府  992円 ⇒ 1023円


最低賃金のチェック方法

〇時間給の場合
 時間給が最低賃金以上であること

〇日給の場合
 日給÷1日の所定労働時間 が最低賃金以上であること

〇月給の場合
 月給÷月平均所定労働時間 が最低賃金以上であること
  月平均所定労働時間=(365日-年間休日)÷12ヶ月×1日の所定労働時間


最低賃金の対象にならない賃金(上記の計算において除外される賃金)
・残業手当、休日出勤手当、深夜割増手当
・通勤手当、家族手当、精皆勤手当
・賞与
・臨時に支給される賃金(祝い金など)

 
2022年09月13日 10:32

解雇予告の注意点(トラブルにならないようにするには)

労働基準法では、従業員を解雇する際は、解雇予告を行うこととされています。
解雇予告の仕方は、3つあります。

① 解雇日の30日前までに本人に通告する。
   例えば、4月30日付で解雇する場合は、3月31日までに解雇予告をする。
        5月31日付で解雇する場合は、5月1日までに解雇予告する。

 平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払い、当日付で解雇する。
  
③ ①と②を併用する。(①+②=30日になるように)
   例えば、10日前に解雇予告し、その時に20日分の解雇予告手当を支払う。

・解雇予告手当は、解雇予告と同時に支払わなければいけません。
・解雇予告は、口頭でも構いませんが、のちに法的争いになった場合の客観的証拠となる
 ため、文書も渡しておくほうが賢明です。 
試用期間中の従業員であっても、入社から14日を超えている場合は、解雇予告
 必要です。
 試用期間中の解雇の場合は、解雇予告は必要ないと勘違いしているケースが見受けられ
 ますので注意してください。


解雇予告の除外認定
天災事変その他のやむを得ない事由により事業の継続が不可能になった場合や労働者の責めに帰すべき事由により解雇する場合は、労働基準監督署の認定を受ければ、解雇予告は不要になります。つまり、解雇予告手当を支払わず、即日解雇が可能になります。

ただし、除外認定は、書類の審査、従業員・関係者等へのヒアリング調査を行うため、申請から判断が出るまでに一定の時間を要します。そのため、実務的対応としては、上記①~③の解雇予告をすることがほとんどです。


 
2022年08月30日 14:00

振替休日と代休の違いと割増賃金

労働基準法では、振替休日代休は、明確に区別されてます。しかし、法律上の代休のことを振替休日と言っていたりと、その区別が間違って運用されているケースが見受けられますので、注意してください。

振替休日
あらかじめ休日と定められている日を出勤日とし、その替わりに出勤日と定められている日を休日とすること。
振り替えられた休日がいつになるのか事前に決まっている

振替休日を実施するには、就業規則に休日を振り替えることがある旨の規定があり、事前に振り替える日を特定することが必要です。


代休
振替休日と違い、事前に休日と出勤日を振り替えることをせず、まず休日出勤をし、のちに出勤日と定められている日に休むこと。
※休日がいつになるのか事前に決まっていない。


〇それぞれの割増賃金の支払いは
振替休日の場合は、同じ週内での振り替えであれば、割増賃金の支払いは不要です。ただし、振り替えを別の週と行った場合は、休日出勤した週の労働時間が40時間を超えてしまうため、割増賃金の支払いが必要になります。

例えば、水曜日と翌週の土曜日を振り替えた場合(1日8時間労働、土日休みと仮定)、水曜日が休日になり、翌週土曜日が出勤日になります。すると翌週は、月から土曜まで8時間×6日=48時間労働になるため、土曜日の出勤について割増賃金の支払いが必要になります。※1日あたり給与が1万円の場合、2,500円を支給

代休の場合は、休日出勤した日について、割増賃金(休日出勤手当)を支払い、代休取得時に1日分の給与を控除することになります。※休日出勤手当12,500円を支給し、10,000円を控除、結果2,500円がプラス支給

いずれにより休日出勤をしたとしても、同一週内での振替休日でない限り割増賃金の支払いが必要になりますので注意してください。替わりに休日を与えたから割増賃金の支給は全く必要ないという認識は間違いです。

 
2022年08月09日 14:15

期間の定めのある雇用契約の雇い止め(トラブルにならないようにするには)

雇い止めとは、期間の定めのある雇用契約を期間満了によって終了させること言います。
しかし、雇用期間に定めのある契約であるとはいえ、

契約が更新されて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態になっている場合
・期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態とまではいえなくても、雇用の継続について労働者が期待する利益に合理性がある場合

に該当する場合は、解雇法理の類推適用があるため、正社員の解雇と同様に客観的で合理的な理由が必要になります。
つまり、雇用契約を期間満了により終了させることが難しくなるということになります。


◎雇い止めの有効・無効のポイント

仕事内容
仕事の種類、内容、勤務形態が正社員とどの程度同一性があるか。業務の内容・責任が正社員より軽いなど正社員との違いが明確であることは、雇い止めを有効と判断する方向へ傾きます。

労働条件等
採用条件が緩い、採用手続が簡易、労働時間が短い、適用される就業規則が異なる、などは雇い止めを有効と判断する方向へ傾きます。

契約期間や更新についての説明
「長期間働いてください。」「期間の定めは形式的なものです。」などの労働者への発言は、雇い止めを無効と判断する方向へ傾きます。

契約更新手続
更新回数、通算勤務年数、契約更新時の手続の厳格性はどうであるか。
更新回数が多い、通算の勤務年数が長い、更新手続は簡易なものである、などは雇い止めを無効と判断する方向へ傾きます。

これまでの労働者の更新状況
勤務成績が悪い労働者については過去も雇い止めしてきた、などの実績があることは雇い止めを有効と判断する方向へ傾きます。

その他
前回契約更新時に、次回は更新しないことを合意していた。最初から更新回数に上限を設けていた。などは雇い止めを有効と判断する方向へ傾きます。


上記を総合的に判断し、裁判所は雇い止めの有効・無効を判断します。

 
2022年07月28日 10:50